壱
ほんとうは、ほぼ日の、今日のダーリンみたいに、小さなことばを毎日残したいなと思っているのだけれど、きっと思うようには書けないだろう。
耳障りのいいことばをふわりふわりと綴るのは、自分にとって、思ったよりも気持ちのいいことなのだけれど、そうしていても物事は具体的にすすまない。
もうそういうことばは、自分にはあんまり必要ない。
それでもやっぱり、頭の中に浮かんでは消えていくことを残しておかなくては、世の中の事象はなかなかお互い関連付いてはくれない。過去と現在が歴史や科学や物語でつながっているように。
理(ことわり)を理解するのに、ことばが全てではないのだけれど、重要な位置を占めているのは間違いないだろう。
誰もいない森の中で木が倒れるとき、音はしないのだ。
(鴻巣友季子さん、池澤さんの「きみのためのバラ」、文庫版解説にて)